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「日本の妖怪で透明になれるやつっていうと……」
「歩きスマホは危ねぇぞ」
ツチノコ探偵事務所をでたふたりは、並んで歩いている。
Wikipediaで検索して出てきたのは、提灯小僧という名前の妖怪だった。
歩いている人間の前に現れ、追い越したり追い越されたりしているうちに姿を消すという、何がしたいのかよくわからない妖怪らしい。
画面を見せながら、
「あんたこのヒトのこと知ってる?」
と崇志に聞くと、
「知らねぇよ。それよりそいつ、俺よりマイナーやな」
ちょっとうれしそうな顔になった。
有名かそうでないかを、一本だたらの子孫の崇志は、ものすごく重要な問題にしているのだ。
「さて、あのヒトが知っててくれるといいけど」
ふたりがとりあえず向かったのは、『茶話茶房』という名の喫茶店だった。
『茶話茶房』は、細い小道を奥に進んだひと目に付きにくい場所にある。
ドアを開ければカウベルの音が鳴る、昭和の匂いが漂う喫茶店だ。
店の中には、けっこうな数のじいさんばあさんで賑わっていた。
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