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「廣畑さんは、車の運転はするの?」  赤信号で車が止まったところで、今度は将司から質問を受ける。  こんな感じで話が進めばいいと思った。 「私は免許持ってないの。家族で持ってないのは私だけ」 「そうなんだ。取ろうとは思わない?」 「職場も近いからね……。必要性を感じないっていうか、うん」  弟からは、乗らなくても免許はあったほうがいいと何度も言われた。  しかし、どうにも運転技能に自信が持てず、なかなか教習所に通う気になれないのである。  遥が正直にそう言うと、将司は「オートマ車ならそんなに難しいことはないよ」と言ってくれた。  同じことは家族全員から言われている。 「じゃあ、ちょっと考えてみる」  遥が免許を取ったら、将司は喜んでくれるのだろうか。  そんなことを考えるだけで、不思議と勇気が湧いてくる。  それからしばらく、車内では他愛のない話が広げられ、和やかなムードに包まれた。  最近の仕事の話から始まり、野球の話、今話題になっている映画の話などをしつつ、ところどころで国道沿いに見えるお店に関する話をした。  遥の口数は少なくなかったと思うが、新しい話題を出すのはだいたい将司のほうだった。  道はほどよく混雑しているし信号も多く、割とすぐに止まるから、運転が大変ということはなさそうだった。
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