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「私は、どうしたらいい?」  何も考えることなく、こう聞いた。  こういうめんどくさい質問は弟にしかできないと思っていたけれど、自然と言葉になった。 「こんな言い方していいのかなとは思うけど、できれば自然体でいてほしいかな」  はっきりとした答えが返ってきて、遥は驚いた。  反射的に将司の顔を見てしまう。 「自然体?」 「そう。肩肘張らずに、ありのままに」 「私、できてなかったかな」  言いながら、これまでのデートを振り返る。  なんとかして将司に好きになってもらいたいという気持ちが強かったから、たぶんできていない。  全部楽しめたとは思うけど、揺れ動いていたのは間違いないのだから。 「それは僕にはわからないけど、実際のところ、どうだったんだろう?」  明らかに語尾が上がっていて、質問されたんだと思った。  だけど、何を聞かれたのかがわからない。 「どうだったって、何が?」 「今日の買い物もさ、楽しそうにしてるなって思えるときは多かったけど、ときどき悲しそうな表情にもなってたと思うんだよね」  そんなの、将司の気持ちがわからなかったからに決まってる。  こういうことも今なら言っていいのだろうか。  少し迷ったけれど、遥は無言を返すことにした。
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