幸せのいろは

１６

「そういうところが、だめなのかな。僕だって結構楽しんでるつもりだし、それなりに動揺するときだってあるんだけど」

　思った以上にまじめに受け取られて、遥も少し動揺した。
　だけど、こういう話なら望むところだった。

「楽しんでるとは思ったよ。でも、動揺したんだ？　いつ？」

　正直言って、将司からの愛はまだ感じられない。
　だけど、それはこれから少しずつもらえるのだろう。
　ただ、待ってるだけじゃなくて引き出したいと、遥は思った。

「廣畑さんの服を選ぶときっていうか、いろんな服を見せてくれたときとか、僕のシャツを決めてくれたときとか」
「そうだったの？　え、もしかしてどの服がよかったとか、あった？」

　こういう話がしたかった。
　今はどきどきじゃなくてうきうきだ。

「これっていうものはないけど、実際に着たところを見てみたいって思ったっていうか、どんなふうになるんだろうって思ったよ」
「どうしてその場で言ってくれなかったの？」
「僕が口出しできるようなことじゃないでしょ。どれも似合ってたっていうかかわいかったと思うし、実際に買ったものだって、よかったと思うよ」

　今、かわいかったって言ったよね。
　なぁんだ、ちゃんとそういう気持ちになってくれてたんだ。