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「そんなふうに思ってくれてたなら、言ってくれればよかったのに」
「いや、それはもう、その通りとしか言いようがないんだけど、僕にも計画があったわけで」
「計画?」
「帰り道に、奈央のことを話して、そのあと僕から恋人にしてくれないかって言うつもりだった。だから、アウトレットを歩いている間はあんまりカップルみたいなこともできないよなぁって」
なにそれ、急にかわいいこと言わないでよ。
これまでしっかり者の印象しかなかった将司が突然子どもみたいなことを言いだして、遥の気持ちはすっと軽くなった。
「なに、要するに副島さんも自然体じゃなかったってこと?」
ようやく訪れた反撃のチャンス。
遥はここぞとばかりに攻め込むことにした。
「別に我慢してたってことはないよ。廣畑さんが楽しそうにしてくれればいいやって思ってたから」
「私は結構、副島さんの服選びにも力を入れたつもりだよ?」
「それはもう、本当に感謝してる。二着目のシャツを選んでくれたときだって、突然服を押し当てられてどきっとしたんだから」
おそらく物理的な距離が一番近づいたときだ。
首元にシャツを当てて、似合うと思ったんだ。
あのときも将司の表情はチェックしたつもりだったけど、さほど変化はなかったように思う。
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