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 その人とはうまくいっていたと、遥は今でもときどき思い出す。  しかし、彼の就職を機に会える回数が激減し、彼の気持ちが離れていくのを感じるようになった。  そして付き合い始めて十ヵ月が経ったとき、彼から別れを切り出された。  理由は今回も単純明快で、大きなプロジェクトのメンバーに入ったから、仕事に打ち込みたいとのことだった。  彼のことは応援したかったから、遥は悲しい気持ちを無理やり押し込んで笑顔で了承した。  その後、遥も今の職場である大学に就職し、仕事にも慣れてきた社会人二年目の夏に、三人目の彼氏と出会った。  軽い気持ちで始めたマッチングアプリを介しての出会いで、相手は五つ年上の省庁勤めの公務員。  写真の顔や経歴、趣味などになんとなく惹かれて接触を試みたところ、相手もすぐに遥のことを気に入ってくれて、最初のデートが終わったときに相手から正式な交際を求められた。  その日はとても楽しめたから、遥は迷わずに好意を受け取った。  今度こそ長続きさせると意気込んだ遥だったが、その野望は簡単に打ちのめされた。
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