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その答えはないまま、数年前、突然、正寅は『疑惑』に飲み込まれた。
御崎正寅は、海外のミネラルマーケットで購入したものを、本来ありえない土地に置いて、自ら発見したと偽っている。
そんな糾弾動画が拡散された。
証拠とされる画像も証拠となる石の分析や統計も出された。
正寅には全く心当たりのないことだったが、なぜか最終的には警察にまで呼ばれた。それが『逮捕された』と伝わり、今度は断罪系の番組に家や職場に突撃され、そう多くない友人にも迷惑をかけた。
最終的に疑いは晴れたものの、正寅は仕事も辞め、石を大学に持っていくのもやめた。
古い知人や、同僚、友人、家族は気にするなと言ってくれたが、正寅は人間と接するのが嫌になっていて、山小屋での住み込み仕事を紹介してもらった。
何人かのしつこい糾弾配信者は来たが、こういったニュースはあっという間に飽きられるため、正寅の暮らしを破壊した後は興味を失って誰も来なくなっていった。
ささくれだっていた気持ちが、ようやく落ち着いてきたのは、一人で迎えた山小屋での新年を迎えるのが2度目になってからだった。山が雪に囲まれる冬は、小屋では客を受け入れていなかった。正寅は小屋のオーナーに、ここで過ごさせてもらう代わりに、古くなった部分の修理や、山岳警察の雪山訓練の援助、それから登山路の整備などを請け負っていた。
その冬は流星が多かった。
雪がやんで、星がすぐ近くに見える山小屋の脇で、正寅はポットにコーヒーを入れて流れ星を見た。
山の合間に消えていく小さないくつもの光を見て、正寅は久しぶりに心が浮き立つのを感じた。
そろそろ降りてくるか?
自分の論文に、正寅の名前を惜しげもなく併記してくれた恩師ハリーが新年の挨拶がてら、メッセージをくれていた。
その時は、まだ無理だと答えたが、一週間も過ぎない間に気持ちが揺れているのを感じて、正寅は苦笑いした。
温かいコーヒーの湯気と香りの間に、流星が一瞬だけ光っては消えていく。
上を見上げると、満天の星がきらめく宇宙がすぐそこにあり、その星が本当に降ってくるように感じられ、正寅は大きく息を吸い込んだ。
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