03 模擬試合

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 レイの魔力量が多くないのは事実だ。普通の貴族のおよそ半分といったところだろう。この世界の常識で考えれば、日に何度か魔法を使える程度。普通の平民程度の魔力量しか持たない。  だが今のレイには、没落貴族にもかかわらず学園に推薦されるほどの魔法理論に加え、前世の知識があった。  そう、今レイが展開した風の魔法には、燃焼する物質が一切含まれていなかったのだ。 「一度初級魔法を防いだ程度で調子に乗るなっ!」  アドルフが間合いを詰めてくる。それも恐るべき速度だ。魔力で脚力を強化したのだろう。その人間離れした速度から繰り出される刺突は、レイの肉体をやすやすと貫くだろう。だが、所詮は目で追える程度の速さ。そして、 「間合いが伸びるわけでもない」  レイののど元にレイピアの切っ先が迫る、その瞬間、レイはただ一歩、斜め左に体をずらし、同時に剣を握る右手を引き絞った。 「はああっ!」  一瞬の後に繰り出された無駄のない刺突は、レイの狙いにたがわずアドルフの右手を穿つ。 「何ッ⁉」
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