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が、そこは腐っても貴族の教師。瞬間的に展開された魔力障壁がレイの刺突をすんでのところで阻み、近接戦での不利を悟ったアドルフはやや大げさとも思えるほどに距離を取った。
魔法剣において、間合いは重要視されていない。銃を相手に剣で間合いを取ろうとしても無駄だからだ。だが、今回のように相手が不用意に間合いを詰めてきた場合は話が別だ。
今の動きは、斜めによけて小手を打つ日本剣道形二本目の打太刀。遠見玲が剣道初段獲得のために練習してきた基礎中の基礎。
実践で再現するなどとてもできない代物のはずだったが、間合いの概念に乏しいこの世界の魔法剣ではうまくはまった。
「本当に……、痛い目を見ないと気が済まないようですね、私たちにへこへこと頭を下げ、媚諂っていたあなたはどこへ行ったんです?」
今までのレイがアドルフの言うようにふるまっていたのは事実だ。教師はおろか、有力貴族の嫡子である生徒にも決して強く出ることはしなかった。
すべては平民である自分のクラスを守るため。だが、そんなものは言い訳だ。
レイ・ホークアイは怖かったのだ。貴族位を剥奪され、一度人生の崖の淵に立たされたその恐怖が、自分より強いものに反抗する勇気を根こそぎ奪っていった。
だが今のレイにはそれよりももっと恐ろしいものがあった。
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