01 転生

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01 転生

「……生、レイ先生」  声が聞こえた。遠く、かすかに、けれど確かに。遠見玲の名を呼ぶ声が聞こえた気がした。 「――っ、いつまで寝ているんだ! レイ・ホークアイ先生‼」 「は、はい⁉」  怒鳴られ、飛び起きる。いや、けれどそれはレイの名であり、玲の名ではない。目の前で自分を怒鳴りつけているこの男、アドルフも玲の知っている人物ではなかった。 「え」  そこまで考えて、困惑する。アドルフというこの男。確かに玲が知るはずもない男だ。そもそも日本人ですらない。長い金髪をポニーテールのように束ね、堀の深い顔立ちにはいら立ちの色が浮かんでいる。玲が知らないはずの男。だが確かに、『自分は』この男のことを知っているのだ。 「あなたという人は……呆けるのも大概にしていただきたい。たかがあの程度の魔法、防げなくて教師が務まりますか」  阿呆? いや、魔法と言ったか、この男、アドルフは。それを防げなくてレイは気を失ったと。いや、それはおかしい。現についさっきまで玲は車を運転していて、それで……。
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