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「落ちた……のか」
「そうですよ、まったく。いくら魔力総量が少ないとはいえ、初級魔法程度で落ちるなんて、あなたのような人がいるから、魔法学園の教師は出世できない外れ枠などと言われるのです」
はあ、それはすみません、とレイは反射的に口にする。怒られたら何となく謝ってしまう、仕事の中で身についてしまった癖のようなものだった。が、それがアドルフは気に入らなかったようだ。
「すみませんじゃありませんよ! あなたがそんなだから、クラスの生徒からは皆やる気が感じられないのです!」
語気を強め、怒りを前面に押し出すアドルフ。だがその言葉に怒りを覚えるのは、今度はレイの番だった。自分はいくら罵られても構わない。だが生徒にまでその評価を押し付けるのは、彼らの努力をないがしろにしているも同然だ。
「そんなこと……!」
言い返そうとして、ふとアドルフの後ろにいる人だかりが目に入る。中学生くらいの少年少女が一五人ばかり。皆嘲るような視線でこちらを、レイを見ている。身なりがいい。アドルフが担当する貴族の第二クラスだ。
そしてその集団から外れた場所で五人程、呆れたような――あるいは諦めたような顔でこちらを見つめる生徒たちがいた。アドルフの生徒と比べ、全体的にどこか汚れていて、自信もなければ覇気もない。そんな力ないはずの視線が、レイにはひどく突き刺さる。
混乱する頭の中でもこれだけは理解できた。あれが自分の、レイ・ホークアイの生徒だ。レイ・ホークアイが担当する、王立魔法学園・平民クラスの生徒たちだ、と。
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