終 章 真実

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 霊斬は布団にゆっくり座ると、上着から長着までを脱ぐ。  古傷が多い霊斬の身体には、真新しい刀傷が刻まれていた。腹から胸に走る刀傷、左肩には二つの刀傷、左の二の腕。胸から脇腹にかけて長い刀傷。右脇腹に刺し傷。左腕に刀傷がひとつ。  どの傷口からも鮮血が滴っている。 「また派手にやったな。ずいぶんと酷い。お前、無茶しただろ?」  四柳が怒りをあらわにして言う。 「分かるのか」  霊斬は苦笑するしかない。 「分かる。傷を負ってすぐにここにきていれば、ここまで酷くならん」 「野暮用があってな。少し、遅れた」 「そんな野暮用、ほっぽり出せ。この馬鹿」  四柳がぼそっと言った。 「それはできん」  霊斬が苦笑する。 「お前って奴は……」  四柳が溜息を吐いた。 「背中は?」  四柳が言いながら、背中を見る。  とても痛々しい火傷の痕が目を引いた。新しい傷がないことだけを確認し、四柳は思った。  ――これほどの傷をその身に受けながら、どうしてそんな顔をしていられるのか? おれには見当がつかない。 「そこに寝ろ」  四柳の指示に素直に従い、布団に横になる霊斬。  綺麗な布を大量に用意した四柳は、助手に水を汲みにいかせた。戻ってきた助手にもう一人呼んでこいと言い、丹念に傷口を洗い始めた。  傷口を洗い始めてからしばらくすると、すべての傷を洗い終えた。 「これから、傷を縫う。痛いかもしれんが堪えろよ」  四柳は言うと、助手二人に、身体を傷に障らない範囲で押さえるように指示。  針と糸を用意すると腹から胸にかけての刀傷をゆっくりと縫い始めた。終わらせると、次は胸から脇腹にかけて長い刀傷に取りかかった。四柳は額の汗を乱暴に拭うと、治療を再開した。
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