終 章 真実

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 右脇腹の刺し傷を一瞥すると、血が止まらなかったので布でぎゅっと押さえ、しばらくして出血が緩やかになったところで、丁寧に縫い始めた。傷を縫いつけた。続いて、左肩二か所の傷。出血は緩やかになっていたものの、二つの傷があまりにも近くにあるので、縫うのに苦労した。左腕と二の腕は、傷が深く、布でしばらく固定しておかないと、縫うことすらまともにできない状態だった。二の腕の布を解くと、出血が緩やかになっており、四柳は内心で安堵した。二の腕の傷を塞ぐために、糸を弛ませることなく、丁寧に縫っていった。最後に左腕。斜めに走る刀傷がとても痛々しい。四柳は慣れた手つきで傷を縫い、終わらせた。  四柳は複数の薬草を薬研に放り込んで混ぜながら、霊斬に声をかけた。 「起きれるか?」 「ああ」  霊斬はゆっくりとした動きで半身を起こした。 「……酷いな」  霊斬が自分の身体を見下ろして、呟いた。 「ああ。だから言っただろ?」  四柳はそう言い、清潔な布に薬草を塗りつけ、傷に当てていく。素早くそれを終わらせると、助手達に晒し木綿を巻くように指示する。手早く晒し木綿が巻かれていった。  それが終わると霊斬が口を開いた。 「どれくらいで治る?」 「……様子次第だが、最大でも二月だ。今日はって……もう朝だが。泊っていけ」 「分かった」  霊斬はうなずくと、ゆっくりと身体を倒し、布団をかけた。 「嬢ちゃん、終わったぞ」  四柳が千砂を呼ぶ声が、霊斬に耳に入ってくる。  霊斬は首だけ動かして千砂を見る。 「無事でなによりだよ」 「そうか」  霊斬の返事はそっけない。 「あんたってさ本当……自分のことがどうでもいいんだねぇ」 「ああ」  霊斬が硬い声でうなずいた。 「敵にあんなふうに啖呵(たんか)切ってさ。あたしには無理だよ。自分が可愛い」 「お前はそれでいいんだ」  霊斬が苦笑して言った。 「霊斬……あんたもさ、それでいいんだよ」 「……なに?」  霊斬は首をかしげる。  千砂は遠い目をした。 「自分のことを大事にしないで、嫌って、赦さなくて、責め続けて。……それでいいんだよ。死ななければさ」 「そのたびに死にそうになって心配だというのは、ついて回るぞ?」 「なにを今さら」  千砂が苦笑する。 「そうか……そうだったな」  霊斬も苦笑した。
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