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それから六日後の決行日前日。鞘師が再び店を訪れた。
「それで、どうでしたか?」
座るやいなや身を乗り出してきた。
「仁部陽一は、鞘を自身の感情の捌け口として使っているようです」
「つまり……?」
「失礼。鞘を畳に叩きつけています」
「……そうでしたか」
鞘師は沈んだ声で言った。
「心当たりがあるのですか?」
「昨日仁部様がいらっしゃいまして、強引に曲げた状態の鞘を持ってきたのです」
「それはまた酷いですね」
「ええ、新しい鞘を受け取られてお帰りになりました」
「厄介でしたね」
霊斬の言葉に鞘師はうなずいた。
「決行は明日です。それまでの辛抱です」
「分かりました。よろしくお願いします」
鞘師が頭を下げると、霊斬はすっと、修理した短刀を差し出した。
「ありがとうございます」
鞘師はそう言いながら、短刀を受け取り、店を後にした。
決行日当日の夜、霊斬は黒の長着に同色の馬乗り袴、黒の足袋、同色の羽織を身に着ける。隠し棚から黒刀を取り出して腰に帯びる。黒の布を首に巻いて、顎から鼻まで引き上げる。草履を履いて、仁部家へ向かった。
屋敷内に静かに侵入し、中庭の植木に隠れて、様子を探る。
「きなさい」
中庭に面した部屋の障子を開け、陽一が言い放った。
物音がして部屋から出てきたのは、まだ幼さの残る少年だった。
二人はその部屋を離れ、屋敷の奥へと歩いていく。
霊斬は彼らの後を追った。
屋根から様子を見ていた千砂も、三人の後を追った。
霊斬は二人が入っていった部屋の前で聞き耳を立てている。
千砂は屋根裏から様子を見ていた。
すると怒号が聞こえてきた。
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