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「答えろ」
「そうだ」
霊斬はそれだけ聞くと、ゆっくりと刀を抜き、背に隠す。
「それからもうひとつ。どうして貴様は暴行をやめない?」
「……あれは僕のものになる、女だ。どう扱おうと僕の自由だろう」
なぜそれを知っているのかと怪しみながらも、徳助は答えた。
「貴様は勘違いをしている」
「勘違い?」
徳助が首をかしげる。
「それがいいことではない、ということだ。人を奴隷のように扱おうものなら、少なくとも、声のひとつやふたつ、上がるものだ。だから、こうして俺がいる」
「……自分が蒔いた種、とでも言うのか?」
「そうだ。そしてその行為には必ず報いがある。貴様だけが許されることではない」
「僕を殺すのか?」
その問いに霊斬は首を振った。
「いいや、違う」
霊斬は話に付き合うのに疲れたのか、背に隠していた刀をずるり、と出す。
徳助の怯えた表情を見た瞬間、霊斬はあっという間の距離を詰め、徳助の右肩を刺し貫いた。
「あああ!? い、痛い……」
悲鳴を上げた男に対し、霊斬は大きな溜息を吐いた。
徳助の胸倉をつかんで、壁に叩きつけ、右肩を抉る。
大いに叫んだが、霊斬の動きは止まらない。
刀をそのままに、腹や頬を殴り始めた。その動きはどれも隙がなかった。霊斬の繰り出す一撃はどれも重く、男が情けない声を出すのは一分もかからなかった。
「もう……やめてくれ」
「いいだろう、だがな、貴様はその発言すらも許さなかった。貴様が自分のものだと言った女の気持ちが、いくらか分かっただろう。改めなければ……命はないと思え」
霊斬は冷ややかな声で言った。
「……ああ。あいつには、ちゃんと、謝るから、もうやめてくれ……!」
懇願する男から刀を抜いて、鮮血を振り落とし、鞘に仕舞うと店に戻った。
千砂は徳助がふらふらしながら、通りを歩いていくのを見送ってから、その場を去った。
翌日の昼間、依頼人が顔を見せた。
「ありがとうございました」
依頼人は床に腰を下ろすや、礼を口にした。
「あの後、どうでしたか?」
霊斬が尋ねると、女が少し安心したように答えた。
「傷の手当てもせずに、土下座をして謝ってきました。どうやら心を入れ替えたようです」
「そうですか」
「本当に、ありがとうございました」
依頼人は言いながら、銭五枚を差し出した。
霊斬は苦笑しながら銭を受け取り、袖に仕舞った。
「またのお越しをお待ちしております」
霊斬は頭を下げた。
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