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「え? あ、いいですよ? 」
答え終わる前に、パシャっとシャッターが切られた。ふふっとショートボブの子が笑う。
「そんな古いカメラ、ユウトも好きよねぇ 」
「コレじゃなきゃ駄目なんだよ、デジタルなんかじゃ綺麗に撮れない 」
そう言って、パシャパシャと連写する。カメラを向けられて、私もニコッと笑った。
パシャッとまた、シャッターが切られる。
「うん、良く撮れたと思うよ 」
爽やかな笑顔に、ドギマギとしてしまう。
「先にリビングで待ってて下さいねー 」と言って、私はキッチンに急いだ。
「お客様がいらっしゃるって分かっていたら、スコーンでも焼いていたのに 」
独り言を言いながら、人数分の食器を揃える。
北欧製の二つの青い剣が交わった、このお気に入りのティーカップを使うのも何時ぶりだろう。
テーブルに並べながら、お茶は何がいいかしら?と悩んでいると、トントンと階段を登る音が聞こえた。
え? ちょっと待って。
勝手に部屋を見られるのは、恥ずかしいし、困る。
後を追ったが、もう4人は私の部屋に入っていた。
「へぇ、可愛い。この部屋は割と綺麗だね 」
「そうですか? ありがとうございます 」
ショートボブの女の子が棚から写真立てを手に取る。それは、私が両親と3人で写っている写真だ。
「ねぇ、カオリ。この子じゃないの? 」
「どれ? 見せて 」
長い黒髪の女の子が寄って来て、ショートボブの子から写真を受け取る。
カオリと呼ばれたその子は、その写真立てに手を翳して目を瞑った。何やらブツブツと言葉を唱えている。
何をしているのかしら?
皆が黙ってカオリを見守っているから、私も一緒に見ていることにする。
少しして、カオリは目を開くと、「そうね 」と言った。
「この子よ、サキ 」
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