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駄目だ。気付いていないふりをするのが一番なのに。
「あそぼう」
「うるさい」
軋む歯の隙間から言葉が漏れる。
うるさい。
うるさい。
うるさい。
魂がこの世に残るのは何か思い残すことがあるからだとか、そんなの俺には関係ない。
「俺はお前らなんて見たくもないんだ」
見たくも無いのに、勝手に見えてしまう。
関わりたくないのに、勝手に寄って来る。
そのせいで、いつも怖がられて。
周りからは、気味が悪いと言われて嘘つき呼ばわりだ。
人の気を引きたいだけの痛い奴。
自分は特別だと思いたい奴。
挙句に言われるのは……
「鷹取、どうした?」
「さ、桜木さん」
振り返ると、桜木さんが怪訝な顔をして立っていた。
その後ろには更衣室にいた二人も一緒だ。
二人は顔を見合わせ、堪えきれない嘲笑に口元が歪んでいた。
「顔色悪いぞ、大丈夫かよ。誰と喋ってたんだ?」
心配してくれる桜木さんよりも、その後ろの二人の嬉々とした視線が怖い。
みるみる体が縮こまり、口元、指先、足が小刻みに震えだした。
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