最終話 喫茶うたたねの魔法

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翼さんも外へ出て犬の元へ駆け寄る。 俺も後を追ったが、犬は逃げるどころか嬉しそうだ。 途中で切れてしまっている短い足を浮かせたまま、残りの三本足でぎこちなく歩いて来た。 「シンさんにも相談しないと」 「大丈夫だって。お祖父ちゃん優しいし。お店の前でなら、飼い主さんが見つかるまでは許してくれるでしょ。ねー、ポチ」 「なんですか、ポチって」 「犬と言ったらポチよ」 「適当過ぎでしょ」 「良いの。愛情たーっぷりで飼うんだから」   翼さんは「ねーえ、ポチ」と、こげ茶色の雑種の顎を両手でわしわしと撫でてやった。 ポチも嬉しそうに尻尾を振る。 「あら、敦士君にも懐いてるじゃん」   しゃがんだ俺に体を擦り付けて右、左と繰り返した後、膝の下にすっぽりと体を丸めて納まった。 スニーカーのつま先に、ポチのお尻が乗っている。 その重みが可愛くて、思わずそのパサついた背中を撫でずにはいられなかった。 「この子はうちの看板娘だねぇ。女の子みたいだし」 撫でられながら、うっとりと目を細めるポチに、俺の声まで甘くとろけてしまう。 「犬ってこんなに可愛いんだなあ」 「へえ、敦士君。犬、好きなんだ。そんなデレデレな姿、意外だなあ」 「高塚さん――いや、えっとこれは」 慌てて立ち上がった俺の足元で、ポチが 「撫でてくれないの?」  と円らな瞳で見上げてきて――俺はまただらしなく目を垂れさせて、さっきよりも更に愛おしく撫でてしまう。
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