最終話 喫茶うたたねの魔法

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「ところで、そろそろ開店かなと思って来たんだけど」 「あら、もうそんな時間か」 「すみません、すぐに準備します」   腕時計は九時十分。 「あたしはこの子を病院で診てもらおうかな。とりあえず首輪とリード買ってくるわ。ごめんね、いきなりお手伝いさん不在で。じゃ、またあとで」 「はい、宜しくお願いします」   翼さんの揺れるポニーテールを見送り、俺はポチの前にしゃがむ。 「今日からよろしくな」 【喫茶 うたたね】 ドアプレートを表に返し、 「どうぞ」   高塚さんが店に入る。  シャンシャンシャン   今日もこの森には命が溢れている。   こうして鳴いている蝉たちもまた、懸命に命を輝かせて。 「シンさん、そろそろ起きてくるかな」   ふと見上げた二階のシンさんの部屋の窓が開いている。 夏の日差しを浴びた白いカーテンが、窓の外へとふわりふわりと大きくはためいていた。
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