第一話 空色のクリームソーダ

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「はい、お待たせ。敦士君、お昼は食べた?」   白磁のカップに注がれた珈琲から、ふくよかな香りが立ち上る。 「いえ、実はまだで……」   本当はその為にコンビニに行こうと思っていたのに、店の前であの女に遭遇した。    あの女に追いかけられるのは、これが初めての事では無い。 今の運送会社でのバイトを始めてから数回。 あれは七月の終わり頃。 帰ろうとしたら職場の前にいたのが最初――のはずだ。   実際にはわからない。もっと前にも会ったことがあるような気がする。   とにかく、今日もまた女に追いかけられた。 もう二時になろうとしている今、俺のお腹は限界値を迎え、空腹を通り越してチクチクと痛みを伴い始めていたところだ。 「ナポリタン食べるかい。具材が余ってて、小野さんにも協力して貰ってたんだ。サービスするから、敦士君もどう?」 「そんな、お金はちゃんと払います」   背負っていたリュックを下ろし、財布を出して「持ってます」と見せる。 「気にしないで。ほら、人助けだと思って」   シンさんは、切ってあった玉ねぎとピーマンをフライパンで炒め始めた。 挽肉を入れ、油が弾ける音が腹の虫を更に騒がせる。   やがて焼けついたケチャップの香りをまとったパスタが、粉チーズと乾燥バジルで化粧をして目の前にやってきた。 「ごゆっくり」 「ありがとうございます。いただきます」
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