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バース科の医療カウンセラーから、オメガには発情期というものがあり、その時にはどういう事態が起こるのかを丁寧に教えられているが、玲はまだ体験していない。
もちろん、年相応の性的な変化は玲の身体に起きているが、それと『発情』というものとがどう違うのか、未だよく理解出来ないでいた。
そんな状況なので、玲は自分がオメガであるという意識も希薄になりがちだ。暑い季節などは、つい首に巻くリボン状のガードを外して外出してしまい、母親にキツく叱られたものだ。
社会的にも、オメガがごく普通に生きることができるように、法律がどんどんと整備されていた。大昔のようにオメガ差別をしたら、厳罰を受けることになっている。
あくまでもオメガ自身が抑制剤のコントロール下にあることが前提とはなるが、社会全体としてヒートへの配慮は当然行われるし、合意の無い性的な接触自体が厳しく禁じられているので、興味本位でオメガとのセックスを望むようなことは誰もしない。
そもそも、人口の大多数を占めるベータにとっては、オメガの特質はほぼ無関係だ。オメガのフェロモンの影響は受けないし、オメガのせいで欲情を催したりしない。誰もがそのことに気がついた。多くの人は、オメガが隣にいることを怖がる必要は無いのだ。
一方で、法律整備の反面として、オメガであるというだけで、その存在が極端に大切にされる世の中になってしまった。
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