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田舎の高校だから生徒の成績はピンキリだ。最上位層は国立大学を目指す特進クラスに入るが、ほとんどの生徒は玲のいる名ばかりの『進学コース』だ。
割り振られたクラスは、休み時間には陽キャの一軍連中が出す大きな声が響く賑やかな雰囲気で、大人しい玲は特に目立つことはなかった。
男性オメガが入学するということは、教師の間では周知されていたが、不要な混乱を避けるため、生徒には知らされていない。未だ発情期が訪れていなかった玲は、容姿は整ってはいるが、一見しただけではオメガと分かるほどの雰囲気は醸し出してはいなかったので、取り敢えずそう判断された。
多分このクラスの人間は皆ベータだ。これは玲が予想したとおりだった。
中堅校なので、アルファは入学しないだろうと思っていたのも、玲がこの学校を選んだ理由の一つだった。成績優秀なアルファは、当然のように名門校に進学する。この学校のようなところには来るはずがない。
話に聞くアルファは、背が高くて力が強くて、とてもかっこいい容姿をしているらしい。
クラスを見渡しても、それっぽい人間はいない。玲はホッとする反面、少しがっかりもした。もしかしたら、という気持ちは多少なりともあったのだ。
あくまで単純な好奇心だ。オメガとしての性的な関心ではない。玲はまだ、心身ともに成熟していない。淡い恋すらも経験していない。
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