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玲と仲が良いのは、同じようなタイプの級友だ。多少オタク気質ある彼らとお互いの趣味の話をするのが、玲にとっては何より楽しい時間だ。勉強の成績は相変わらず並のところを走っていたが、居心地のよい高校に入ったとその時は思っていた。
だがどこの世界にも、目聡い人間はいるものだ。
身なりに気を遣うことは無くとも、成長とともに玲の麗しさは次第に隠せなくなっていた。季節が過ぎ、玲の中に大人になりかけのそこはかとない色香が漂い始めると、玲に声を掛けてくる男子生徒がぽつぽつと現れるようになった。
「持ってやるよ」
日直のときに、玲が職員室から荷物を運んでいると、声を掛けられることが増えた。玲の知らない上級生ばかりだ。
購買で並べば、何故かパックジュースを手渡され、慌てて返そうとすると、「飲めよ」と言って無理やり押し付けられたりする。
何故自分がそんなことを言われるのか理解できず、玲が不思議な顔をして相手を見つめると、皆一様に顔を赤くして、そっぽを向く。
時々、思い切って玲を誘う勇者が現れるが、玲の方が怖がって逃げてしまうと、もう手が出せずに棒立ちになってしまう。
結局、男子の上級生の間で、玲を見守る親衛隊のような集団が出来上がった。
だが、『見守る』とはきれいな言い回しで、要は監視だ。上級生の目があるところでは、仲の良い友人たちは遠慮をしてしまうようになり、なんとなく玲のことを遠巻きに見るようになった。
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