14 現実

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 確かめ合ってから動かないと、自分も相手も不幸になるという意味だと、玲は理解している。  だったら自分はどうしたらいい?  何も知らない彼に自分の気持ちをぶつけて、優しい彼を困らせて、それが本当に自分のしたいことなのか……。  オメガだということは、放課後の二人には、自分の口から言おうと思った。彼らに対する玲からの信頼の証のつもりだ。  その他の人は、首筋のガードを見たら自ずと分かるだろうから、放っておけばいい。それに、どうせ勝手にうわさは広がる。  きっとという存在を奇妙に思う人もいるだろう。気持ち悪がられるかもしれない。チラ見されならがコソコソと話題にされるのは、嫌なことを直接言われるよりも嫌いだ。  相沢さんも俊吾も絶対にそういうことはしない。玲は強く確信している。何度考えても、そこには迷いも疑いも無かった。  だったら、彼らには自分から言いたいと思った。沢田さんの言いたかった、『オメガとして、自分らしく』ってそういうことだろうと思う。  もうひとつ、大切なことがある。俊吾だ。大事な友だちで、多分アルファで、自分が好きな人。彼のことを考えるだけで、胸がときめく。  会えば楽しいし、話をすれば誰よりも弾む。勉強で分からないところを聞けば、ふざけながらでも丁寧に教えてくれる。
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