14 現実

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 玲は俊吾から聞く剣道の話が特別好きだ。彼は多弁ではないが、時に身振り手振りを交えて、自分の剣道に掛ける思いを玲に伝えようとする。そういうところに、玲は彼の為人(ひととなり)を感じていた。  何より、彼から人の悪口を聞いたことが無い。フラットで知的で、それでいて熱く、誰よりもかっこいい。玲の知っている高島俊吾はそういう男だ。  だからこそ、今のままでいたいと玲は思った。  勇気を振り絞って告白して、もし俊吾と付き合うようになったとしても、自分たちはその先には進めない。  だって、あの時の自分を俊吾に差し出せばどうなる? フェロモンを纏った状態でアルファと恋愛をしたらどうなる? 答えは分かっている。多分、底なしの泥沼にダイブするのと同じだ。もう抜け出せない。  少なくとも玲は、自分を止める自信が無い。そうでなくてもエッチなことで頭がいっぱいになる時がある。ヒートではない普通の時の話だ。高校生男子なんて、皆同じようなものだろう?  自分はオメガなのだ。玲は、つい昨日までの快楽を求めて悶えていた自分を噛みしめた。  友だちのままで、いよう。玲はそう思った。今までと何も変わらなければ、それが一番いい。友だちなら、アルファもオメガも関係ない。  優秀な俊吾は、きっとすごい大学を受験する。今からがとても大事な時期だ。彼の人生の邪魔するようなことは絶対にしたくない。
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