14 現実

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 それに、男同士で付き合っていると周りにバレたら、とんでもないスキャンダルになる。アルファとオメガであっても、自分が男のオメガであるが故に、逆に好奇の目に晒されるだけだ。陽の当たる場所を歩く彼を、そんなものに巻き込みたくない。  それは自分も同じだ。玲にだって夢がある。美術教師になって、自分と同じようにを助けたい。  初めて自分からこうなりたいと思えたのだ。弱くて、へなちょこで、情けない自分が、自分らしく生きていく為に初めて動けたのだ。この夢は絶対に叶えたい。その為にしなけらばならないことが山ほどあるのは、分かっている。  明日学校へ行けば、きっと俊吾に会う。久しぶりでなんだか気恥ずかしいが、会えることはとても嬉しいし、早く彼の顔が見たい。気持ちは全く揺らがない。  放課後に美術室に来てもらい、自分がオメガだと告げた後に、俊吾には別に時間を取ってもらおうと玲は思った。ふたりだけで話がしたい。そして、聞けるものなら、彼がアルファかどうかを知りたい。  そして、知った上で彼に提案するのだ。今のままでいよう、と。オメガとして、自分らしく……大切な友だちを守りたい。  玲の目から、1粒だけ涙が落ちた。それで心が決められた。オメガとして、今自分が願うのはそれだけだ。  台所から見る窓の外は、いつの間にか暗くなっていた。夕焼けが消えた空の色が、玲の心を落ち着かせていった。
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