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だが、本や雑誌はなかなか捨てきれなかった。これは学生時代からの俊吾の癖で、昔から紙の類を捨てるのを躊躇してしまう。
多分子どもの頃、大切なプリントをつい捨ててしまい、母親から大目玉をくらったことが原因だ。そこから派生して、本でも雑誌でもチラシでも、絶対に不要だと思えるまでは持つことにしている。
そんなわけで、本だけはたくさん持ち帰った。
これらの箱が一山あるが、実際には段ボールに仕舞ったままでも良いものも多い。思い出の品と言うヤツだ。俊吾は取り敢えず2箱だけ開けて、本棚に並べることに決めた。
空になった段ボールを畳んでいると、少し煤けた紙袋が出てきた。端が破れかけている。この手のものはすべて捨てたはずなのにと不思議に思い、中身を見ると、古いバインダーノートが入っていた。
青い背表紙を見た途端に、俊吾の記憶が蘇り、気持ちが高校時代に引き戻される。埃臭い袋の中からは、苦くて、懐かしい匂いがした……。
取り出して頁をめくってみると、まずは数学の方程式が書いてあるページに当たった。
シャープペンで書かれた繊細な細い字と、図々しそうな赤鉛筆の太い字が並んでいる。俊吾はすぐに、玲と自分との放課後の学習会の様子を思い出した。週に一度、美術室の片隅でふたり並んで問題集を解いていた日々だ。
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