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「このターリーのセットが美味しいんだ。超おススメ」
写真には、銀の盆の中央に黄色いライスがこんもり盛られていて、周りにカレーのようなものが入った小皿がいくつも並んでいる。写真だけでも興味をそそられる。
「僕はベジにするけど、チキンでもマトンでもいいと思う。そっちはちょっと辛いんだ。どれも全部美味しいよ」
玲が細かく説明をする横から、コップを持った若者が席にやってきた。
「先生、いらっしゃい。お水が遅くなってごめんなさい」
「大丈夫、大丈夫。君が忙しいのは何よりだよ。元気にしてる?」
「うん。今週は連休だから毎日忙しい」
「へえ、そうなんだ。大変だね」
玲が若者と話す様子は、所謂教師と生徒という感じはではなかった。緊張感は見当たらず穏やかで、少し年上の友人として、彼の近況を楽しそうに聴いているように、俊吾には見て取れた。
端で眺めていても、ふたりともごく自然体で、とてもいい関係を築いているように思える。俊吾は自分のことでもないのに、何故か誇らしい気分になった。
「で……。高島君はどうする?」
そうだった。玲のことを見ていて肝心なことを忘れていた。俊吾は慌ててメニューを見返した。
「あ、俺……一緒でいい」
結局、考え無しな注文になってしまった。
他事を考えていたのがバレバレで、玲には「相変わらず主体性が無いんだから」と呆れられた。
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