3 アグリーダック

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3 アグリーダック

 アルファでさえなければ、俺にはまた違った人生があったのだろうか。  高島俊吾は、アルファだ。それも、三拍子揃った実にアルファらしいアルファとして成長していた。  実家は田舎町の歯科医だ。駅にほど近い県道沿いにある自宅の前で、父親が歯科医院を開業している。衛生士2人と助手2人を率いて診療するこじんまりしたものだが、地元のかかりつけとして程々には繁盛していた。  母親は元高校教師で、早期退職をした後に自宅の座敷を改装し、週3日書道教室を開いている。  俊吾は、教科書を一度読めばすべて頭に入ってしまう子どもだった。その頭脳のおかげで、小学生の頃から常に抜きんでた学業成績を収めてきた。  体格にも恵まれスポーツも万能だ。幼いころから通った警察の剣道場では、同級生では誰も俊吾の相手が出来ず、小学生のころから高校生相手に稽古を積むことになったほどだ。  容姿も、所謂 美形ではないが、くっきりと整った目鼻立ちが、いかにも涼し気で爽やかな雰囲気に嫌味が無く、誰からも良い印象を持たれる。  そこまで有利なカードを持っていると、自然と周囲からも浮きがちになるものだが、生来の面倒見の良さや、さっぱりとした気性が受け入れられ、彼の周りには常に友人がいた。  女子からの熱視線はもちろんだが、同性からの好感度がとにかく高い。出来の良さを鼻にかけた振舞いもしないので、周囲の大人たちからの覚えも大変に目出たい。
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