3 アグリーダック

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 元々、俊吾は細かいことに拘る性格ではない。  兄弟の中で一人だけ骨格がガッシリしていて、細面の両親とは全く似ていないことは、そんなものかと深く気にも留めずにいた。家の中で一人だけ足のサイズが大きいことも、髪の毛にウェーブが掛かっていることも、だ。  だが、実子ではないと知ったことで、諸々の事象に小さく付いていたクエスチョンマークの付箋が外れ、全てがつながったような感覚を覚えた。自分だけがアルファだったことも、だ。  バースについては、思春期が始まる中学入学時から保健の授業で丁寧に習っていた。それに加えて、俊吾自身が生命の不思議に興味があった。医学部を志そうと思ったのも、そこからの派生だ。  確かにベータとベータの夫婦間でも、アルファは生まれる。だが、あまり起きないことだ。アルファは人口の1割以下で、専らアルファ同士やアルファとオメガの関係から生まれるものとされている。  両親ともにベータという自分のケースは、あまり無いことでもあるが、逆に言えば全く無い話でもない。俊吾は、単に自分はそんなイレギュラーな生まれだと思ってきた。ただこれは、自己防衛本能が働いた故で、そう思い込もうとしていたのかもしれない。  進学先の大学が決まってしばらくすると、父が珍しく俊吾を夕食に誘ってきた。
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