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「やっぱりそうだ」
玲は俊吾に向かってニッコリ笑った。
「倉庫の片づけをしていたら、外からこっちを見ている人相の悪いバカデカい輩を見つけて……」
「おい。俺、いきなり不審者扱いか」
「はは。まだ通報はしていないから大丈夫」
「何言って……」
「ここは学校だからね。今のご時世は、気をつけ過ぎで丁度いいんだ」
さっきまでの柔和な笑顔を一変させ、真顔で玲はそう言った。
なるほどと俊吾は思った。昨今の様々な事件は、当然に学校関係者を神経質にさせるのだろう。最初に自分を見つけた相手が、良く知る玲だったから助かったことになる。己の不用意さを俊吾は即座に反省した。
申し訳なさそうにする俊吾を見て、再びふわりと笑う笑顔が懐かしい。なんとなく気持ちが解けた。
「今日、朝の職員会で周知があったから、話は聞いているよ。どうぞ、中に入って」
玲は通用口を開けると、俊吾の入校を促した。職員室まで案内をしてくれるという。
「ここで働いてるのか?」
「そうだよ。美術の教師をしてる」
玲は俊吾の半歩前を先導するように歩こうとするが、早足が癖になっている俊吾にすぐに追い越されそうになる。勢い、駆けったようになる姿が、小犬のようでかわいらしい。失礼ながらも、俊吾はそう思ってしまった。
「絵が上手いの、図抜けてたもんな。今じゃ先生か……すごいな」
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