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玲は、学生の時よりも髪を伸ばしていて、肩につきそうな長さになっている。こうして長髪にしている方が、ストレートの黒髪の魅力がそのまま出ていて、玲の雰囲気に合っていると感じた。
その髪の下から覗く日に焼けていない肌が、切れ長の目を一層際立たせる。細身で華奢だが、決して不健康な感じはしない。しなやかでしっとりとした大人の身体つきになっている。
「井上……」
懐かしくて俊吾がそう呼びかけた瞬間、懐かしい顔は目を伏せ、首を横に振った。
髪が細いうなじにからみ、その中から白い首筋が現れた。そこに浮かび上がる輪状の淡いあざに、俊吾の目は釘付けになった。
「……井上? あの、これって……」
「……ん。僕はもう井上じゃないんだ。今はね、僕は『酒見』になったんだ」
玲は横に並んで歩きながら、躊躇いなく俊吾に左手を掲げた。
男にしては細い指に、か細いプラチナの指輪が填められている。再会する前から全て分かっていたことだが、改めて見せ付けられると、どうしても心が疼く。
俊吾は一旦目を背けたが、ついもう一度玲の首に刻まれた輪の痕をチラリと見てしまった。番の証の噛み痕が、どうしても生々しく光っている。
これを人目に晒さないために髪を伸ばしたというのなら、それは理解できる。男性でこれを持つ者は日本に10人もいない。
誰もが憧れる、美しい至高の男性オメガ。玲は、1000万人に1人しか生まれない奇跡の存在だった。
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