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アルファが身近に存在するということは、オメガの玲にはポジティブな話ばかりではない。第二性がオメガであることは、何よりもまずデメリットが強調される。
オメガ特有の現象であるヒートやフェロモンは、その性的な側面が事あるごとに言及され、常に誤解を招いてきた。過去に起きた不幸な事件の原因は、事実はどうであれ、オメガがアルファを誘因したこととして、皆の中にいくつも記憶されている。
だが、現代では事情がかなり変わってきた。発情と衝動を抑制する良薬の開発が進み、今ではヒートなどのオメガ特有の症状はある程度コントロールが出来るようになっている。もはや、過去の時代とは隔世の感がある。
抑制剤の進化は、不幸な事件が減少をもたらしただけでなく、オメガ性を持っていてもほぼベータと同様の社会生活を送れるようになる恩恵があった。コントロールさえ出来ているのなら、オメガであっても会社や学校に普通に通えるし、集団の中にオメガがいたとしても、問題が起きることはほぼあり得ない。
それでもオメガである以上は、注意を払いながら生活していてちょうど良いと言われる。油断した頃に事故は起きるからだ。
玲もオメガ判定が出た翌日から、ピンク色の小さな錠剤を毎朝1粒ずつ飲むようになった。半年に一度、大きな病院へ行き注射も打ち、専門家のカウンセリングも受けている。そのおかげもあって、今まで困ったことは何も起きていない。
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