ショートショート 絆創膏

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ある日。 学校に行ったら僕の好きな子が右手首に絆創膏をしているのが目に入ったんだ。 どうしたんだろう? 僕はいつも以上に、しかも無意識に彼女を目で追っていた。 転んで擦り傷を作ったとか? でも手首は変かな。 まさかリストカット? いや、それならもっと傷が大きくなりそうだよな。 それに彼女は右利きだったし。 猫に引っかかれたとか? うん、ありそうだ。 でも猫を飼ってたっけ? 僕が悶々としていたら、もう放課後になってしまった。 ええい!もう聞いてみるか! 僕はいつも一緒に帰っている友達に「用事があるから」と言って教室に残った。 そして、ちょうど(かばん)を持って帰ろうとする彼女の方へ行って話しかけたのだった。 「ねえ、その絆創膏(ばんそうこう)どうしたの?怪我(けが)?」 「うん、ちょっとね」 彼女は言いにくそうにはぐらかして、困ったような笑顔のまま帰ってしまった。 僕は“?マーク”を顔に出して、彼女の出ていったドアをただ見ていた。 すると彼女の友達がそっと僕に声をかけてきた。 「あれは願掛(がんか)けだって。恋のおまじないってやつ」 聞いてみると、どうやら利き手の手首に好きな人の名前を書いて絆創膏を張って隠していると、思いが通じるっていうことらしい。 女の子ってそういうの好きだよなあ。 なんて思った瞬間、僕は気づいてしまった。 彼女、好きな人がいるんだ! 僕は肩を落として、ひとり寂しく家路についたのだった。
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