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後悔……ではない
ヤォさんの話を要約しますと、クゥコさんはもともとソゥラ教の関係者だったそうです。
まずその時点で、驚きその①なのですが。
その当時、まだ若かりしヤォさんは剣術の腕を買われ、教会のお偉いさんの用心棒を任されたようです。
徐々に教会の深層内部を知るにつれ、クゥコさんとはその頃に出会ったとか。
ソゥラ教の開祖である、竜の奇跡を受けた少女には子供がいたようです。その子供がクゥコさんだと。
はい。驚きその②です。
今現在は薄く紫色に染めていますが、当時は真っ白な髪に血色の瞳。異様な姿に映ったようで。
始まりの竜は一度、天空に戻ったものの、それからも地上に何度も舞い降り少女に会いに来ていたようです。
そのさなかの子供の発覚です。
始竜のまとう白き鱗と赤き双眸。
そっくり色のクゥコさんを、奇跡と思うか異端と思うか。
その後、クゥコさんの存在は秘匿されたとか。
竜の涙で不治の病を治せるのなら、それ以上に濃い血や肉はどんな効果があるのだろう。そう思う不届きな輩はいたようで。
本来なら母親が静止するところを、生まれてきた我が子の異常ぶりに育児放棄をされたとか。
そうやって肉親に見離されたクゥコさんは教会の奥深く、人体実験のような生活を余儀なくされたとか。
驚き……そんな感情で括っていいものではありませんね。
時系列は省略しますが、その後、ヤォさんとは親密な仲になったとか。
もともとクゥコさんは頭がよく、間近で実験の内容や成果を観賞していたのです。竜の奇跡など必要ない、医療や薬を研究する人材を募り、ひっそりと医学の道に特化したバィヤ教を立ち上げたとか。
クゥコさんを苦しめていた、研究チームのリーダー組織が亡くなったのを機に(そんなに都合よく亡くなりますかね?)、ソゥラ教を抜けだしたとか。
その時にはバィヤ教の幹部であった、ヤォさんの同期さんとも一緒だったとか。
今まで温室育ちだったクゥコさんを、地上に連れ出すことに抵抗がなかったといえば嘘になるとヤォさんは言いました。
それでも、過去に受けた悲惨な経験よりも、共に未来の歓喜を味わおうと約束したそうです。
「そう――、だったんですか」
壮絶な過去話に言葉が見つかりません。
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