後悔……ではない

4/4
前へ
/70ページ
次へ
「私は雇ってもらうのですから、ヤォさんには長生きしてもらわなくちゃ困ります! それにクゥコさんだって生きる意味を失くしてしまったら、また……ソゥラ教に逆戻りしてしまうのではないんですか?」  正直、地雷かなとは思いましたよ。  それにせっかくの働き口を、無下にされては路頭に迷います。  だからこそ、卑怯ですがクゥコさんの名前は出させて頂きました。  だいたい、可能性があるのに諦めてしまうなんて。せっかくクゥコさんを連れ出したのに。  ピリついた空気が部屋を漂います。 「…………」 「……はぁ」  私の想いが届いたのか、ヤォさんは深い溜息を吐きました。 「そう、だな。嬢ちゃんに出会えたこと自体、何かの奇跡かもしれないしな。とりあえず、今言ったことは胸に収めてくれ」 「はい。でも私、クゥコさんの味方ですから」  にっこりと、気が変わらないように釘を刺します。 「はは。まいったな嬢ちゃん」  ああ、良かった。一時はどうなるものかと。  少しだけピリついた空気をどうにか回復せねばと、話を振るにしても話題が少なすぎます。  ただクゥコさんのいない間に、どうしても聞いておかねばならないことがありました。 「あの、私って人形なんですよね。そのどんな顔なのでしょう?」  どうしても諦めきれなかったようです。   「うぅん、が好きそうな顔だよ」 「そうなんですか」  苦虫をかむような渋い顔つきで、ヤォさんが言い放ちます。  この時私は浮かれておりました。  ヤォさんと私で共通する人物が、一人しかいませんでしたもので。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加