38人が本棚に入れています
本棚に追加
/40ページ
勉強でもスポーツでもゲームでもなんでも、初めは分からなかったものが一度コツを掴むと一気に開花するといいますか。
井戸端会議から戻ってきて、今度は私の服を洗濯しに外に置いてあるタライを出してきます。
ヤォさんとクゥコさんの服も、と申し出たら必要ないと遠慮されました。
――あとで発覚したのですが、どうも人気者の二人です。ヤォさんが体調を崩してからは、代わる代わる女性がお世話にやってくるのだとか。
そりゃクゥコさんの機嫌が悪くなるといいますか、私もそうですが、他人が頻繁に出入りされるのは神経をすり減らします。
と、私を雇うことにしたのはそういった彼女らへの牽制なのかもしれません。
ポンプ式で水はけが良いように下は格子になっている排水溝なので、タライから水を流すのは簡単です。
時間帯のせいなのか私しかいません。
ここで大丈夫ですよね? と一抹の不安が募ります。
きょろきょろとあたりを見渡して、ふとどこかから視線を感じました。
遠くに焦点を合わせると、鳥がこちらを見つめています。
はるか遠くきっと人の視力では捉えられないほど、小さな点のような場所で。
猛禽類の鋭い眼つきが私とかっちり合うと、その場を飛び立ってしまいました。
獣は眼を合わせると威嚇の意味があるんでしたっけ。
どうしましょう。襲われたら。
とはいえありえないほどの遠い距離です。
きっと気のせいでしょう。
そう暢気なことを考えていたら、しばらくしてバサリと羽音がしました。
大きな鷲? 鷹?
確かクジラやイルカみたいに大きさで名前が変わったような。
とにかく鷲にしときましょう。
喧嘩を売られたのかとやってきたのでしょうか。
刺激しないように気にしない風を装っていると、鷲の方から声をかけてきました。
最初のコメントを投稿しよう!