違和感

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『なぜ見ていた?』  随分と低い魅力的な声です。  う、うわー。眼をつけられてしまいました。  やはりこの世界、動物は喋るんですね。 「…………」  一度聞こえないフリをしましたが誤魔化せなかったようです。 『人形よ。なぜこんなところでうろついている』 「あの、どなたでしょうか?」  昨日の白いフクロウの仲間でしょうか?  下手にこちらの手の内を見せない方がいいでしょう。 『こちらが訊いているのだ。答えよ』  あ、なんだか会話が成立しないタイプですかね。  高圧的ですし。ちょっと好きになれません。どうしましょう。  無視を決めつけてこの場を立ち去りましょうか。  けれど少し考えて「私、記憶がないんです」と答えます。  さてどう返答するのか。 『貴様誰だ? バィヤのではないのか?』  私の知っている単語と知らない名前です。  バィヤ……教は確かソゥラ教に壊滅されたんでしたっけ?  その忌み言葉がすぐに出るということは、この人形の姿はそれだけ関りがあるということでしょうか。  にしても井戸端の女性三人の時は気にされなかったのですが、人形とわかる何かがあるのでしょうか。 「あの……ではこれで――あっ!」  何か嫌な予感がしてその場を立ち去ろうとしたとき、鷲に首元を掠められました。  ひらりと舞うリボンを(くちばし)に加えて。  それはクゥコさんから頂いた、所謂(いわゆる)プレゼントではなく首輪のような意味で渡されたものでした。  呆然としているうちに、そのまま鷲ははるか遠くに姿を消してしまいます。  どうしましょう。  クゥコさんに怒られます!
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