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「あの、これってもう少し何とかなりませんか?」
しばらくして、さすがに倫理的にダメでしょ、と思わず声がもれました。
皆さんから譲り受けた運搬用クロマル号――というらしいです。全身を覆う布を被っているのでどんな姿は勝手に想像して、人型かと思ったわけです。
勝手にお姫様抱っこなりおんぶをしてもらえるのかと思ったら、四つん這いになりました。
「二足歩行より四足歩行のほうが早いからな」
さも当たり前のようにヘィセさんは言い放ち、クゥコさんもヤォさんもそれに対して何の指摘もしません。
私だけおかしいのでしょうか?
「嬢ちゃん。ちゃんと跨がないと落ちるぞ」
ごねて時間を無駄にするわけにもいかず、嫌々ながらも横座りすると、ヤォさんが私を持ち上げ馬乗りにさせます。
これはいわゆる、孫が祖父にお馬さんにしてもらう状態です。
――ああああ、恥ずかしい。
おまけに申し訳ないといいますか。
勝手に喋らないものだと思ったのが、頭部の口元らしきところから「ゴホウビ、アリガトウゴザイマス。ブヒヒィ」なんだか聞きたくない単語が聞こえてくるのです。
怖い。
私だけもやもやとした気持ちを抱えつつ、街を抜け、しばらくは緊張のせいか皆無言でした。
星屑が落ちてきそうな静かな夜です。
周りに灯りがなくても意外にも夜目が利きます。
風が吹き、砂が舞い散る荒野を延々と進んでいきます。
皆さんはかなりの健脚らしく、急ぎ足で目的地に向かいます。
私の足の短さでは、確かに足手まといになってしまいましたね。
白いフクロウがナビをしているのか先方を飛び、その次をヘィセさん、クゥコさん、私と並走してヤォさん。
しばらくして緊張の糸が解けたのか、
「嬢ちゃん。あいつヘィセ・アロィ。頭のおかしい天才」
ヤォさんが初対面の私に説明してくださいました。
天才と聞いてもしかしたら、と訊ねます。
「私のこの身体の人形を作った方ですか?」
「そうそう。ちなみにあの別嬪なのもな」
先を行く美少女の栗色の髪が靡きます。
人間と遜色なく、ここまで精巧に作れる技術はとんでもないことでは?
「イチマルよ。その野蛮な男と話すでない」
聞き耳を立てていたヘィセさんが苦々しい表情で振り返ります。
「ヘィセ、彼女はイチマルじゃない。リンだ」
「はっ、失礼いたしました。リン殿、その男と会話すると莫迦が移りますぞ」
クゥコさんが正すと素直に従います。
どうにもヤォさんには厳しく、クゥコさんには甘いのがヘィセさんの印象です。
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