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無言もなんですし、状況は分かりませんがとりあえず礼は言っておきましょう。
「あの、ありがとうございます」
ぴたっと彼の作業する手が止まりました。
なにか地雷的なものを踏んでしまったのでしょうか。
「何も覚えてないの?」
振り返り、その透き通るような苺のように赤い眼が私を射抜きます。別にやましいことをしているわけではないのですが、いろいろな意味でのドキドキが止まりません。
覚えていない。
それは私ではなく、この身体の持ち主に対してですよね。
余計なことをいってボロが出ないようにここはとりあえず沈黙がベストでしょう。
「すみません」
とはいえ素直に謝るのも大事ですよね。
その返答に何か言いたげな青年でしたが、すぐさま切り替えてテントを片付けて大きなリュックに収めると、その場はすっかり更地になりました。
見渡すと私の荷物はないようです。
「君は竜灰跡場で落ちていたんだ」
リュウカイセキジョウ?
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