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どれくらい進んだのでしょう。
しばらくすると耳の良いこの身体に、クゥコさんの息切れが微かに聞こえてきます。
「ヘィ、ちょっと休憩。俺、疲れたー」
全く息の上がっていないヤォさんが提案します。
前方のヘィセさんがスピードを落としながら、振り返りました。
「まったく、これだから、腑抜けは……」
西洋人形姿のヘィセさんは私と同じで、疲れ知らずなのでしょう。
旧知の仲であるからこそやれやれといった口調は、クゥコさんを眼にして尻つぼみになります。
「我が君、気づくことが出来ず申し訳ありません!」
「……なんのこと? それより早くたどり着きたいんだけど」
強がっていますが、ゆるく立ち止まると、息切れが大きくなりました。
それなりに持久力はあると思うクゥコさんですが、ヤォさんに比べれば体格の差で体力が少ないのは仕方ないのでしょう。
「無理して倒れられても困るだろ。休めるときに休め」
ポンとヤォさんはクゥコさんの頭を撫でながら、休憩できる岩陰を探します。
私が跨っているクロマル号も状況に応じられるのか、そろそろと歩き移動します。
「クゥコさん、乗ってください」
さすがに私だけ楽をするわけにもいかず、降りてクゥコさんに勧めますが、
「やだ、ソイツ気持ち悪い」
ブヒィヒヒィ、と嘆きのような歓喜のような声が漏れ聞こえます。
はい。確かに気持ち悪いです。またこいつに乗らなければいけないのか……。
「ヘィセ、ヤォに効いている薬の効果は?」
「激しい運動をしなければ夜明けまで大丈夫です」
「効力が切れたら?」
「あらゆる細胞が悲鳴を上げて、激痛が走るだけです」
「やだぁ、怖―い」
他人事のようにヤォさんが茶化しますが、笑っている場合ではないでしょう。
「にしてもヘィセ、随分と強力な薬を精製出来たな」
「実を申しますと私に協力者が出来まして。その相方の細胞を少し頂き、研究した成果であります。まだ試作段階ですので、運用化するには至りませんが」
「お前……、俺以外にも友達いたのか……!」
「貴様を友だと思ったことはない!」
「僕は友だと思っていたのに」
「我が君は特別です!」
そんなやり取りが聞こえてきます。
えっと、ちょっと待ってください、相方? 細胞とは?
「あのヘィセさん、その細胞とは?」
引っかかるところは訊いておかないと気になりまして。
「おお、リン殿。興味がありますか?」
そうウキウキとヘィセさんは語りだします。
ただものすごく早口で、専門用語といいますかこちらの世界の単語が多く、すべてを理解するには無理がありました。
クゥコさんは聞き耳を立て、ヤォさんはあくびを漏らします。
要約すると、『竜の呪い』は他の竜の遺灰で精製した薬でも治せること。ただそれを見つけることがかなり困難であること。
クゥコさんたちとは離別して、ヘィセさんは自らの研究を続けていたとのこと。
そうして彼もまた、別の竜灰跡場で、運命的な出会いをしたのだとか――。
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