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来訪者②
ヘィセさんの相方さんの話を聞いて、私の心は複雑です。
いえ、むしろ焦りすら感じています。
異世界において現代知識をひけらかす。大したことでもないのに大げさに驚かれたり、チヤホヤされるのが異世界転生の醍醐味ではないのでしょうか?
けれどその相方さん。
助けてもらったお礼にと、今はヘィセさんの手伝いをしているとか。
いままで高等な知識のせいで理解不能だったヘィセさんの理論を、短期間で理解し、かつ、いろいろなアイデアも提案したとか。
「天空に行く手段や瘴気に耐えられる人形の改善も、彼の良案なのです」
嬉々として演説するヘィセさんを尻目に、内心唇を噛む思いです。
私なんてこの世界に来て、やったことといえば、掃除と洗濯ぐらいしかしてないのですが。私だってもっとチヤホヤされたい。
などと思うのは烏滸がましいと思いますがね。
このままでは異世界人としてのアドバンテージが、全くなくなってしまいます。
「どうして天空に行きたいんだ?」
ヤオさんの素朴な疑問が問いかけます。
それは私も不思議に思うといいますか、私の世界で喩えるのなら、未知の世界――宇宙に行くような感覚なのでしょうか。
つまるところ竜は宇宙人?
「地上にある竜灰は極少量しか存在しないし、紛い物が多い。効能もたいしてあてにならないからな。ならば現地調達したいと思うのが研究者としての常だろ? ――あっ、ああ、決して捕縛や殺傷などは考えておりませぬよ。少しばかりの標本を入手したいと思っているだけでしてっ!」
最後の方は竜の子(?)であるクゥコさんに向けての弁解ですね。
散々ソゥラ教で実験対象として、長いこと幽閉されていた身としては、聞き捨てならない由々しき事態なのでしょう。
「そうして彼が操作する探索に長けているイチマル号で、天空までたどり着くことが出来たのですが、非常事態がおきましてな。 現地でなにかを入手したのはいいものの制御が狂い、そのまま落下してしまったようでして」
「それを見つけたのが僕ってことか」
竜灰跡場での出来事を、ようやく合点がいったという風にクゥコさんが呟きました。
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