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「保護していただいたのが我が君で幸いでした。もしソゥラに捕まっていたらと思うと、腸が煮えくりかえるところであります!」
「呪術使いのアイツ、ねちっこいからなぁ」
ヤォさんの口ぶりに、どうにも共通で因縁のある方がいらっしゃるようで。
「ただ、地上に落ちた際に【視覚】が切断されてしまい、再び接続しようとしたところ、断線されてしまいまして」
「それは悪かったね。調べた時に君の印があったから、もしやとは思ったけど、下手に別のモノが入り込んで利用されるのもと思ったから、万全を期してね」
「いいえ、最善の判断でございます。それにクゥコ様から久方ぶりの一報に胸が躍る気持ちでありました」
私なりに解釈しますと、スマホのようなもの、でしょうか。
下手にハッキングされるよりかは、機内モードにして通信を遮断するとか?
人形には作り主の刻印があるのでしょう。
そしてクゥコさんはそれを知って、ひっそりとヘィセさんに連絡を取ったと。
「あの、この人形は遠隔操作が出来るものなのですか?」
「無論。なにより吾輩は外気に触れるのが、ことごとく嫌であるからな」
「地下がお前の住処だもんな」
ヤォさんがチャチャを入れます。
それを無視しながら、
「ただ、どうしてもいまだに不安定なところがありましてな。それを補うために、【眼】の併用が常でして」
すぅっと微かな羽音をさせて、白いフクロウがヘィセさんの肩に止まりました。
まるで腹話術人形のように、白フクロウが喋ります。
「コチラノ方ガ、主力デアリマス」
意志を持つようにペコリとお辞儀します。
「もしかして二つ併用して操作してるんですか?」
「マァ、ソウデスナ」
「それってすごいですね!」
素直に感心すると、フフンと白フクロウが心なしか得意げな顔をします。
けれど武闘派のヤォさんからすれば、至極当たり前の仕様なのか、
「そうなのか? 多角的に視覚を共有するのは初歩的なことなんじゃないの?」
あまり共感してもらえないようです。
「ふん、万年脳筋の貴様に言われたくないわ。吾輩の生き方に共感してくれる者もいるのだ!」
「のうきんって?」
聞きなれないワードを私に訊いてきます。
ヘィセさんは揶揄して言っていることは確かなので、私は言葉を選んで回答します。
「えっと、元気な人ってことです」
「そっかー」
にっこりと目尻にシワを刻んで無邪気に笑うので、これ以上補足するのはやめておきましょう。
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