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瞬時にヤォさんの剣筋がヘィセさんに閃きます。
「クゥ!」
「はい!」
ぐいっと腕を掴まれて、転びそうになりながらその場を立ち去りました。
訳が分からずに、クゥコさんに連れられ岩陰に身を潜めます。
「クゥコさん、なんなんですか!?」
物陰に隠れ声を潜めながら訊ねると、私に顔は向けずヤォさんとヘィセさんの動向を見守ります。
「ソゥラ教の呪術使いに、ヘィセの人形が乗っ取られたみたい。あいつ僕のことずっと諦めてなかったから」
あっ、といろいろと思考を巡らせて結論に至ります。
ソゥラ教を抜けたにもかかわらず、幹部の方は人形で作ったクゥコさんの死を信じず今も探していたのかもしれません。
乗っ取り……憑依みたいなものですかね。
この状況にさせてしまった私の過失は計り知れません。
「あ、あのクゥコさん、すみま……」
「しっ!」
物陰から覗き見すると、ヤォさんと???が戦っております。
ですが様子がおかしいのか、緊張状態のようで。
にらみ合う二人。曲刀を構えるヤォさんと素手の西洋人形。
「なぜ避けない?」
険しい口調と怪訝に思うヤォさんは、切っ先をつきつけたまま問いかけると、頬に傷をつけた西洋人形は無表情で拭います。
別に赤くするつもりはなかったのか、血ではなく透明な液体がたらりと頬を伝い顎から滴り落ちました。
「ふむ。痛覚はないか。ならば」
無言で素早い蹴りがヤォさんを襲います。
反撃して斬りつけるわけにもいかないせいか、防戦一方になってしまっています。
「素晴らしい! やはりヘィセの操り人形は感度が良い!」
中身の自我が強いのか、低音ボイスの見知らぬ人は興奮気味に呟きます。
「ヘィ! 言わなかったけど、なんで戦闘用人形で来たんだよ!」
「仕方ナカロウ。無事ナノガ、千四〇号シカナカッタノダ!」
叩きつけられた白フクロウが、ふらふらと飛びながら私たちの元にやってきます。
「ヤォ! 壊サズニ動キヲ封ジテ下サイ! 莫迦力ダケガ取リ柄ナンデスカラ!」
「簡単に言うけどね、お前の戦闘人形、性能良いんだからなっ!」
ヤォさんはぼやきながらも???の攻撃を回避していきます。
???は痛覚がないせいか曲刀の威力など気にもせず、距離を詰めていきますので、ヤォさんは後ずさりや回避するしかありません。
「くっそ、面倒だな。動けないように脚切るか」
さりげなく怖いことを言い放ちます。
「ヤメテー! 傷ツケナイデーッ!」
白フクロウがさらに真っ青に真っ白になります。
そりゃ自分の作品が眼の前で壊されるかと思ったら、悲鳴が上がりますよね。
膠着状態が続く中、耳打ちするようにクゥコさんの声が届きました。
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