来訪者②

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「リン、あいつの動きを止める。人形をそのまま中継なしに動かすのは難しいから、必ずどこかに【眼】が存在する。君の探知能力で探してほしい」  【眼】を探す。あのリボン付きの鷹ですよね。   「あのどうするんですか?」  失敗は許されないのですから、落ち着いて、ちゃんと説明を聞かないと。   「不意を突いて閃光弾を投げる。君が場所を示してくれれば撃ち落とすことも可能だから」 「でも遠かったら?」  初めて見たスリングショットの腕前を思い出して、クゥコさんだったら撃ち落とす自信があるのでしょう。  でも届かない距離であったら?    そんな疑問が顔に出たのか、ヘィセさんが捕捉します。 「我ガ君ノ魔導(まどう)(ちから)ハ、一流デス」  魔導。なるほど。私が想像する魔法というよりかは、状態強化効果(バフ)がかかるといった感じでしょうか。  通常なら届かない距離も、魔導の力で伸ばすことが出来るということですね。  でももっと単純で効率的なことがあるのでは。 「あの直接人形の動きを止められないのでしょうか? 私の時みたいにアクセス出来ないみたいな?」  パソコンで見立てるのなら、今ハッキングされている状態なのですから強制終了してしまえば――ああでも【眼】が生きているとまた乗っ取られるのか。――などと私の提案は意味がないのだと察しました。 「あーもう、ねちっこいな!」  ヤォさんの苛立ちのこもった声に我に返ります。  砂が触手のように象られ、無数に襲い掛かってくるところを切り落としていきます。 「ふむ、魔導の伝達率も通りが良い。教会の人形とは比べ物にならない出来であるな」  うっとりと、ちょーっとばかり上から目線の言動に、私は好きになれません。 「ヤォ・ドゥよ。貴様が未だに『竜の呪い』に抗えるのは御子(みこ)様のそれはそれは甲斐甲斐しい世話のおかげであろう。だがどうだ? 貴様の存在自体が御子様の自由を奪っているのでは? せっかく外に連れ出したのに、貴様自身が枷となっていることに気づかぬほど愚かであったか?」  ???は皆さんの言う通り、ねちっこい性格なのか、本当に嫌味たらしくそしてじわじわと心を(えぐ)ってきます。 「うっせーな。いまから――」  ヘィセさんの研究所に行く所を、うっかり話すわけにはいかないのでしょう。ヤォさんが口ごもります。 「貴様と程度の低い会話などしていられぬ。我としてはようやく探し出した、御子様の帰還を切に望むのですがねぇ」  そうねっとりとした口調で、岩陰に隠れている私たちの方に視線を向けます。  それを(さえぎ)るかのようにヤォさんが私たちの前に移動しました。 「お前もね、……いい加減しつこくね? いくら振り向いてもらえないからって……、意地悪する……のってモテない奴がすることだ……と思う……よ?」   「黙れ」  問答無用で砂の触手を動かし、ヤォさんに襲い掛かります。 「――!」  私は息をのみました。  先ほどのヤォさんの動きであれば易々と防げる攻撃を、今度は無抵抗で襲われてしまい、砂煙の中、倒れこんでしまいました。 「イケナイ。激シク動イタセイデ、薬ノ効果ガ早ク切レテシマッタヨウデス。副作用ガ現レテシマッタ――!」  絶望的なヘィセさんの声が耳に響きました。
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