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「リン、あいつの動きを止める。人形をそのまま中継なしに動かすのは難しいから、必ずどこかに【眼】が存在する。君の探知能力で探してほしい」
【眼】を探す。あのリボン付きの鷹ですよね。
「あのどうするんですか?」
失敗は許されないのですから、落ち着いて、ちゃんと説明を聞かないと。
「不意を突いて閃光弾を投げる。君が場所を示してくれれば撃ち落とすことも可能だから」
「でも遠かったら?」
初めて見たスリングショットの腕前を思い出して、クゥコさんだったら撃ち落とす自信があるのでしょう。
でも届かない距離であったら?
そんな疑問が顔に出たのか、ヘィセさんが捕捉します。
「我ガ君ノ魔導ノ力ハ、一流デス」
魔導。なるほど。私が想像する魔法というよりかは、状態強化効果がかかるといった感じでしょうか。
通常なら届かない距離も、魔導の力で伸ばすことが出来るということですね。
でももっと単純で効率的なことがあるのでは。
「あの直接人形の動きを止められないのでしょうか? 私の時みたいにアクセス出来ないみたいな?」
パソコンで見立てるのなら、今ハッキングされている状態なのですから強制終了してしまえば――ああでも【眼】が生きているとまた乗っ取られるのか。――などと私の提案は意味がないのだと察しました。
「あーもう、ねちっこいな!」
ヤォさんの苛立ちのこもった声に我に返ります。
砂が触手のように象られ、無数に襲い掛かってくるところを切り落としていきます。
「ふむ、魔導の伝達率も通りが良い。教会の人形とは比べ物にならない出来であるな」
うっとりと、ちょーっとばかり上から目線の言動に、私は好きになれません。
「ヤォ・ドゥよ。貴様が未だに『竜の呪い』に抗えるのは御子様のそれはそれは甲斐甲斐しい世話のおかげであろう。だがどうだ? 貴様の存在自体が御子様の自由を奪っているのでは? せっかく外に連れ出したのに、貴様自身が枷となっていることに気づかぬほど愚かであったか?」
???は皆さんの言う通り、ねちっこい性格なのか、本当に嫌味たらしくそしてじわじわと心を抉ってきます。
「うっせーな。いまから――」
ヘィセさんの研究所に行く所を、うっかり話すわけにはいかないのでしょう。ヤォさんが口ごもります。
「貴様と程度の低い会話などしていられぬ。我としてはようやく探し出した、御子様の帰還を切に望むのですがねぇ」
そうねっとりとした口調で、岩陰に隠れている私たちの方に視線を向けます。
それを遮るかのようにヤォさんが私たちの前に移動しました。
「お前もね、……いい加減しつこくね? いくら振り向いてもらえないからって……、意地悪する……のってモテない奴がすることだ……と思う……よ?」
「黙れ」
問答無用で砂の触手を動かし、ヤォさんに襲い掛かります。
「――!」
私は息をのみました。
先ほどのヤォさんの動きであれば易々と防げる攻撃を、今度は無抵抗で襲われてしまい、砂煙の中、倒れこんでしまいました。
「イケナイ。激シク動イタセイデ、薬ノ効果ガ早ク切レテシマッタヨウデス。副作用ガ現レテシマッタ――!」
絶望的なヘィセさんの声が耳に響きました。
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