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「ミクャん!」
そうハィセさんが声をかけるので、振り返るとそこには髪を撫でつけた眼鏡姿の、三十代半ばの男性が佇んでいました。
身なりも整っていて落ち着いた雰囲気から、役職の高い身分なのでしょうか。
私と眼が合うと軽く会釈してくれます。
「リンさん、こちらミクャ。僕はミクャんって呼んでるんだけど。ヘィちゃんの秘書兼執事ね」
「はじめまして、竜姫さま。ミクャと申します。幼少の頃からヘィセ旦那様のお世話係をさせていただいております」
深々と今度は頭を下げられて、慌てて私も気持ちは正座します。
「は、はじめまして。リンと申します。この度はいろいろとご助力ありがとうございました」
「いえ。ご尽力いたしましたのは、旦那様含めハィセさまや職員の努力あっての賜物でありますから」
「まーまー。堅苦しい挨拶はこの辺で! ヘィちゃん、さっき寝付いたのにもう起きちゃったの⁉ 眠れるように睡眠薬使ったのに」
「日ごろから常用しているせいもあるせいで、耐性がついてしまったのかもしれません。それに天から竜神さまが舞い降りてくると確信していればなお、ご自身の眼で確かめたいと思うものでしょうし」
チラリとミクャさんが私の方に眼をやるので、なんだか決定的瞬間を見逃させてしまったようで申し訳が立ちません。
「そっか。悪いことしちゃったかな。まぁ、こんなに早く来てくれるとは思わなかったからでもあるんだけど。――そっだ。リンさん、後でヘィちゃんのために再現プレイしてくれる?」
「はぁ、まあいいですが」
天から飛んでくればいいんですよね。
「さてご歓談中のところ大変申し訳ないのですが、リンさま。一度、旦那様の所にお眼通りいただけますでしょうか。このままだといじけて癇癪を起こしてしまいますものでして」
そうですよね。寝不足なのにこれ以上負担をあたえてしまってはいけませんでしょうし、ちゃんとお礼も言いたいですし。
「そういうことでしたら」
ピョコンと座ってる場所から降りると、ミクャさんは不思議な面持ちで呟きます。
「歩かれるのですか? ハィセさまは、お抱きにならないのですか?」
「えっ、なんで? だって女の子だよ?」
ん? なにかハィセさん妙に意識しているといこうことですか?
爬虫類ですよ、私。
あと出来れば自分で歩くのは大変なので、運んでもらえるとありがたいのですが、そう認識されているならお願いしづらいじゃないですか。
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