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そんな私のテレパシーが通じたのか、
「でしたら私がお運びいたしましょうか? その小さな身体では移動も大変そうですし」
やったー!
思わず心の中でガッツポーズをしてしまいます。
「え、いいんですか?」
遠慮気味に断る演技をしますが、もちろん運んでくださいっ!
「かまいませんよ。どうぞお好きに頼ってください」
そうミクャさんは服から布を取り出して、包むように私を抱き上げました。
おお、さきほどまで見上げるばかりで視界が狭かったのですが、なかなかに良好ではないですか。
「ずいぶんとお軽いのですね」
そうなんですか? さすがに自分の体重がどれほどかわかりませんが、――まぁお世辞かもですが――女子としては嬉しい一言です。
そのまま揺られるようにして、ふとミクャさんの顔が近いことに気づいてしまいました。
よくよく考えてみれば、意図的にお姫さま抱っこじゃないですか。
今更ながらにちょっと照れくささがこみ上げてきます。
もしかしてハィセさんそれが嫌で、ってことですか。
そう思うとめちゃくちゃ思慮深くないですか、ハィセさん。
クゥコさんの時は人形でしたし、私も困惑していましたのでそれほど気にしませんでしたが、これはなかなかに羞恥プレイなのでは。
そう思うと今後気軽に抱っこして欲しい、というのは遠慮しなくてはいけませんね。
まぁもっとも私が、恥ずかしくなければですが。
そうこう無駄な考えをしてるうちに、一つの扉の前にやってきました。
なにやら扉の向こうで声が聞こえてきます。
「坊……、ヘィセ旦那様、竜姫さまをお連れ致しましたよ」
そうミクャさんが声をかけた途端、いきなり扉は勢いよく開きました。
乱れた服装と乱れた髪が揺れ、美しい日本人形な顔立ちの人が飛び出してきました。
「待ってたぞ、ミクャ! ……って、きゃーーー‼」
私を目の当たりにした途端、大きな悲鳴をあげられてしまいました。
「うっせぇな、ヘィ」
「落ち着きなよ、ヘィセ」
どうやら同室していたのか、奥からヤォさんとクゥコさんも出てきました。
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