ヘィセ・アロィ

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「そうなのです! それゆえにリューの身体は誰よりもすぺっくもすとれーじも特別製にしてあるのです! 外見は我輩似にするつもりが、リューに任せたらなにやら向こうの世界では、このような姿が一般的だとゴリ押しされまして!」 「えぇっと」  少しばかり納得していない風のヘィセさんは長谷(ハィセ)さんの頬を指でつつきながら、ボヤキます。それと同時に頬をぷくっと膨らませる長谷(ハィセ)さん。にしてもヘィセさん、随分とこちら側の言葉を使いこなしていますね。 「貴重(レア)な魔導石と我輩の体液、それから常に記憶と思考の更新はしているのです」 「?」  理解が追い付かず首を傾げていると、再び長谷(ハィセ)さんが捕捉してくれます。 「手っ取り早く、自分の思考や相手の考えが分かればいいなぁって思ったことあるじゃない? それをヘィちゃんに言ったらぜひやってみようって。簡単に言うとこの身体に入っていると、ヘィちゃんの思考が流れ込んでくるんだよね。まぁ僕の思考や風習も覗かれてしまうんだけど」  それってめちゃくちゃ嫌じゃないですか? 「まぁ他人のスマホを覗いたり覗かれたりしている感じかな。別に僕、(すね)に傷とか持ってないし、もう向こうの世界に帰れないからまぁいっかなって。説明するのも楽だし。――ただ、逆にヘィちゃんの滅茶苦茶な論理や、目まぐるしい思考が頭に追い付かないけど」  常日頃からなのか、長谷(ハィセ)さんの表情は少しばかりげんなりとしています。  ふむ。たとえるなら、いくつもある監視モニターの画面を一人で、全部確認しているような感覚なのでしょうか。 「えっとつまり、ヘィセさんと長谷(ハィセ)さんは……ニコイチなのですか?」 「そうなのです!」 「まぁ……、そう」  本当にそうなのか気になり、確認のためイジワルにこちらでは使わない単語を用いると、ヘィセさんはすんなりと理解しているようです。  つまりヘィセさんは長谷(ハィセ)さんの思考や風習を履修しているということですか。  なるほど。これはとても楽ですね。もっともヘィセさんの素質や地頭がかなり優秀なのだと思いますが。  お二人をメインに話し込んでいると、背後からポソポソと囁き声が耳に届きました。 「何言ってるのか全く分かんねーよな、クゥ」 「まぁ、聞きなれない単語は多少ありますけど」  どうやらヤォさんやクゥコさんには理解不能なようです。  きっとこちらの反応が正しいのでしょう。 「まぁそんなこともあり、我輩の身体は今はリューに貸してはいるのです。もにたーの意味もかねて。将来的にはリューにも、本体の身体では動きにくいので、新しい人体人形を用意したのですが――。リン殿が入られて羽化した証に、顔から下の身体がボロボロになってしまいまして」  あっ、とようやく話が。  そうです。  私があの時、――首を斬られたときの後、どうなったのか。
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