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「ヘィちゃんの連絡で、僕は現地まで出向いたんだよね。そうしたら突然、滝みたいな土砂降りの雨が降ってきてびっくりしちゃったよ。僕、濡れるの嫌いだからさぁ」
はぁ。長谷さん、人形の身体なのに随分水を気にするんですね。いや私が気にしすぎないだけなのでしょうか?
「辿り着いたら、ヤォさんは倒れてるはクゥコさんは人工呼吸しているし、ヘィちゃんが使っていた人形もボロボロで倒れているしさ」
状況説明を聞くだけでもあの時の惨状を思い浮かべます。
そういえばあの呪術師はどこに行ったのでしょうか?
「おまけに外的強化もしてあるイチマル人形も首ちょんぱでもうビックリ! フツーそんな現状になるなんて思いもしないじゃない? おまけに切断された首からまるで何かが抜けだしたみたいであーってなったワケ。あの時僕が飲み込んだ卵が羽化したんだって」
「飲み込んだ?」
「そ。天空に行って、地上に戻ろうとした時さすがに手で持ってたら握りつぶしちゃうかなーと思ったんで、お腹の中に入れておけば後で取り出せるかと思って、飲み込んだんだよね。それで飛び降りた瞬間、卵の方が電波が強かったっていうのかな、こっちの視界遮断されちゃって、そのまま通信プッツリで、内心焦ったねー」
「えっと、確か人形を操るには……?」
なにか魔術的な使用方法があるのでしょうが、みたことがないので想像でしか話せません。
「こういう人形って魔道具というか、基本魔力がある人しか操れないし、魔力量で大きさとか持続とかが関わってくるの。まぁ、ヘィちゃんはそれも一般的に使えるように、開発とかしてたりするんだけどね。――と話は反れたけど、人形を動かすにはこう細―く魔力の糸を繋いでいくような感じ? 糸電話みたいな。だからあまりにも遠いと動作が鈍るのよ。まぁ僕、魔力チートレベルであるからいくらでも遠くまで操れるんだけど」
ふふん、と心なしか鼻を高くされたように感じます。
「でもまぁ、遠隔操作の魔力と現地の魔力じゃあ、結果は明らかだよね。もっともまさか入ってるとか意思があるとは思わないじゃん! あの時は本当に焦ったよ。だってようやく一縷の光が見え始めた時だったから」
ちらっと長谷さんの視線が動いたので、そちらに眼をやると、どうやらヤォさんが戻ってきたようです。
さすがに今度はソファを跨がず、クゥコさんに詰めるように促すと端に腰を落としました。
「何の話?」
飲みかけだったハーブティーをグイっと飲み干します。
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