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実質、聖女の保護は、他の国に取られないための方便だ。聖女を国に縛るために急いで整えられた政略結婚なのだから、愛がなくても問題はない。
とはいえ、罪悪感は常にあった。だって、本当はこんなことはしたくなかったのだから。
第一王子が誰を愛しているかなんて明白だった。
聖女と結婚するために、愛する婚約者と婚約破棄しなければならない。そんな苦悩をにじませた横顔を何度も見たクレアが彼にかけるべき言葉なんて、あるわけがない。自分が何を言っても一時の慰めにもならず、彼をさらに絶望に突き落とすだけだ。
聖女は無力だ。魔は払えても、目の前の困っている人すら助けられない。聖女の力は限られた用途でしか効力はなく、すべての人を幸せにできるわけではない。
(でも、ユリシーズ殿下はわたしとは違う。運命に抗って、自分の未来を勝ち取った。わたしは周りに流されていただけだった……)
国王陛下の名の下に宣誓された、クレアの次の婚約者は第二王子になった。隣国に留学中の今年十四歳になるという、クレアより二歳年下の王子。
まだ顔合わせはしていないが、このたびの騒動を受けて急遽帰国することになったらしい。
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